データインバウンド
訪日客急増の10地域の住民に聞いたオーバーツーリズムの現状、観光客増を肯定的に捉える意見が4割超に
2024.08.08
やまとごころ編集部訪日客の回復に伴い、オーバーツーリズム問題が浮上しているが、実際に観光客の急増に悩まされている地域の人々はどのように感じているのだろうか。企業向けサービスを提供するEY Japanが実施したアンケート調査の結果が発表された。
調査対象となったのは、コロナ禍前の2019年と比較して宿泊者数の増加率が高い地域10都市に在住する各約200名の住民で、Webアンケート調査は6月下旬に行われた。10都市は北海道旭川市、栃木県那須塩原市、東京都台東区、静岡県静岡市、岐阜県郡上市、京都府京都市、奈良県奈良市、島根県浜田市、島根県出雲市、広島県廿日市市となっている。
(図版出典:EY Japan「日本経済をけん引するツーリズム産業への成長に向けて~オーバーツーリズムを今考える」)
観光客の訪問に肯定的は4割、オーバーツーリズムを感じるのは5割強
まず、居住地域に観光客が訪れている現状に対して、「もっと多くの観光客が来てもよい」「観光客が来ている現状をよいことだと思っている」と回答した人は全体の41%、「観光客の数に関心がない、特に気にならない」という回答も合わせると72%となった。一方、「観光客の多い現状をあまりよくないことだと思っている」「観光客はもっと少ない方がいい」「観光客は来ないほうがいい」と回答した人の合計は28%で、比較すると、現状を肯定的に捉える人が多いことがわかった。
▶自分の住んでいる地域に多くの観光客が来ていることを、あなたはどう思いますか?

また、観光・ツーリズムが自分の住んでいる地域の住民が豊かな生活を送るために重要な役割を果たしているかを聞いてみると、56%がポジティブな意見を持っており、ネガティブな意見は15%程度だった。
▶自分の住んでいる地域の住民が豊かな生活を送るために、観光は重要な役割を果たしていると思いますか?

観光客が多く地域に来ることで、オーバーツーリズムと感じるかという問いについては、「とても強く感じる」と「一部の地域で強く感じる」の合計が22%で、これに「やや感じる」と「一部の地域でやや感じる」を足すと、5割強が、オーバーツーリズムを感じているという結果になった。
オーバーツーリズムを感じているこれら5割を超える住民の地域別の割合は、京都市が最も高く、次いで浅草のある台東区、奈良市、宮島のある広島県廿日市市の順となっている。調査対象は一定程度観光客が急増している地域だが、その中でもこれら地域は、より多くの住民がオーバーツーリズムを感じていることがわかった。
▶あなたの地域は観光客が多く来訪し、自分たちの仕事や生活に支障をきたす、いわゆるオーバーツーリズムだと感じていますか?

また、オーバーツーリズムを感じる理由としては、外国人観光客の増加が1番の理由で59%、日本人・外国人の双方の増加によると回答した割合は24%となった。
観光客増加にプラスとマイナスの側面
前述の質問で、観光・ツーリズムが豊かな生活に影響を与えるというポジティブな回答が56%あったが、身の回りに与えるプラスの影響を尋ねると、「明確な理由はないが、なんとなくうれしい」が最も多く、次いで「地域全体の景気が良くなった、お金が流れるようになった」「新しいお店が増え、選択肢が広がった」と続き、「地域の自然、歴史、文化、食など、地域の魅力に関心を持つようになった、または関心が強まった」と、地域の再発見につながるような意識の変化が生まれている状況も確認できた。
▶観光客の多い現状が、あなたの身の回りにもたらすよい影響について、あてはまるものを教えてください(全体)

上記の点についてはオーバーツーリズムを感じている人に限定しても、同様の傾向だった。
▶観光客の多い現状が、あなたの身の回りにもたらすよい影響について、あてはまるものを教えてください(オーバーツーリズムを感じている人限定)

続いて尋ねたマイナスの影響については、「マナー違反(ポイ捨て、食べ歩き、道路の危険な横断等)」が最も多く、次いで、「バスや電車などの公共交通や、道路が混雑して使いづらくなった」という交通の問題、「観光地・施設やその周辺が混雑しており、住民が使いづらい」等アクセス環境の悪化が大きな要因として挙げられた。
▶観光客の多い現状が、あなたの身の回りにもたらす悪い影響について、あてはまるものを教えてください(全体)

特にオーバーツーリズムと感じている住民の間では、「マナー違反」よりも「バスや電車などの公共交通や、道路が混雑して使いづらくなった」という交通の問題を1番に挙げており、また3番目に「市民向けのサービスが後回しになるなど、公共サービスが劣化した」 ことが問題であると感じていることがわかった。
▶観光客の多い現状が、あなたの身の回りにもたらす悪い影響について、あてはまるものを教えてください(オーバーツーリズムを感じている人限定)

最後に、オーバーツーリズムを解消するために、住民が求めている施策について尋ねると、1番に挙がったのは観光客の「マナー改善」(61.6%)で、写真撮影時の私有地への侵入や道路への侵入等が大きな理由とされている。次いで「交通インフラへの改善」(31.3%)、「観光税等の徴収」(24.4%)、「経済的な恩恵の実感」(22.2%)となっている。
▶観光客が多い現状がもたらす不満・課題は、どうすれば解消できると思いますか?

今回の調査で、観光客の増加をポジティブに捉えている現状がわかったが、オーバーツーリズムを感じている住民が日常生活に影響する「公共交通へのアクセスの悪化」を1番の課題に挙げていること、そして観光客への対応に注力するあまり、「市民向けのサービスが後回しになるなど、公共サービスが劣化した」という問題を強く感じていることが確認された。オーバーツーリズムをきっかけに、こうした「日常生活」へのサービス低下が起きれば、観光・ツーリズムをネガティブに捉え始めるきっかけとなるとレポートは伝えている。
▼オランダの取り組み事例
【現地レポ】欧州一高い旅行者税を徴収するオランダ、オーバーツーリズム回避の取り組みと観光戦略
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