データインバウンド
世界の旅ナカ体験市場、拡大続き2029年に3420億ドルへ 複数利用進むも支出伸び悩み、オンライン予約率は3割
2026.08.18
やまとごころ編集部旅行業界調査会社のPhocuswright Inc.と体験型旅行専門リサーチ機関のArival LLCが、世界の旅ナカ体験市場に関する調査レポートを発表した。市場規模や成長見通しに加え、旅行者の利用・支出動向、人気の体験、予約方法やタイミングなどを分析している。
市場規模は2024年にコロナ禍前の水準まで回復し、2029年には3420億ドル(約53兆7000億円)へ拡大する見通しだ。旅行者は1回の旅行で複数の旅ナカ体験を利用する一方、支出額は伸び悩む傾向もみられた。また、オンライン予約比率は旅行市場全体を大きく下回り、市場が拡大するなかでもデジタル化の遅れが浮き彫りとなった。
調査は、世界の体験事業者5664社に加え、米国800人、欧州4カ国(英国・フランス・ドイツ・スペイン)の旅行者1750人を対象に実施した調査や、各種統計データなどを基にしている。
2024年の旅ナカ体験市場は前年比17%増 旅行市場全体を11ポイント上回る
世界の旅ナカ体験市場(ツアー、アクティビティ、観光施設など)の総取扱額は、2024年に2530億ドル(約39兆7000億円)となり、コロナ禍前の2019年水準まで回復した。2025年は2710億ドル(約42兆5000億円)、2029年には3420億ドル(約53兆7000億円)へ拡大すると予測している。
▶︎世界の旅ナカ体験市場規模の推移(2019~2029年)
※単位:10億ドル。2025~2029年は予測値

市場成長率を見ると、2024年の旅ナカ体験市場は前年比17%増となり、旅行市場全体の成長率6%を大きく上回った。2025年以降は成長率が6〜7%程度に落ち着く見通しだが、引き続き旅行業界全体を上回る成長が続くと予測されている。
▶︎旅ナカ体験市場と旅行市場全体の前年比成長率(2019~2029年)
※2025~2029年は予測値。旅行市場全体の2028~2029年の予測値は公表されていない。
濃いグレーは旅ナカ体験市場、青色は旅行市場全体

旅行者は1回の旅行で複数の旅ナカ体験を利用 支出額は伸び悩む
旅行者の行動を見ると、旅ナカ体験は旅行中に複数回利用されるケースが一般的となっている。
米国の旅行者は平均旅行日数が7.1泊と、欧州の旅行者(8.3泊)より短いにもかかわらず、すべてのカテゴリーで利用回数が上回った。平均利用回数はツアー4.3回、アクティビティ4.6回、観光施設4.7回で、欧州の旅行者でもそれぞれ3.5回、4.1回、4.0回と高い利用頻度を示した。
旅行中に複数の旅ナカ体験を利用する傾向は、事業者にとって滞在期間中のリピート利用を促す機会にもなり得る。
▶︎米国・欧州旅行者の旅ナカ体験の平均利用回数
※左から「ツアー」、「アクティビティ」、「観光施設・名所」。濃いグレーは米国、青色は欧州
いずれも1回の旅行で複数回利用され、すべてのカテゴリーで米国が欧州を上回った

一方で、旅行者1人当たりの支出額は大きく伸びていない。米国の旅行者ではほぼ横ばい、欧州の旅行者では減少していた。
レポートでは、経済的な負担から旅行者が支出に慎重になっていることに加え、少ない回数で高額な体験を楽しむよりも、多くの旅ナカ体験を楽しむことを重視する傾向が反映されている可能性があると分析。また、宿泊や交通など旅行の他の要素に予算を振り向けている可能性もあるとしている。
▶︎米国・欧州旅行者の旅ナカ体験1人当たり平均支出額の推移
※左が米国、右が欧州。濃いグレーはツアー、青色はアクティビティ、赤色は観光施設
米国では支出額がおおむね横ばいで推移する一方、欧州では2025年にすべてのカテゴリーで前年を下回った

旅ナカ体験の人気ジャンルは地域で違い 欧州は文化遺産、米国はグルメが人気
旅行者に人気の旅ナカ体験は地域によって特徴がみられた。
欧州では文化遺産・歴史的建造物(47%)、観光ツアー(43%)、博物館(38%)の人気が高く、スパ・ウェルネス体験も33%と米国(23%)を上回った。
一方、米国では観光ツアー(42%)に加え、グルメツアーや料理教室(40%)の人気が高く、食をテーマとした体験への関心が目立っている。
旅ナカ体験予約のオンライン比率は33% 旅行市場全体との差が続く
旅ナカ体験市場ではデジタル化が進みつつあるものの、予約チャネルは依然としてオフラインが中心となっている。
2025年時点のオンライン予約比率は33%と推計され、旅行市場全体の64%を大きく下回った。2026年には36%まで上昇する見込みだが、航空や宿泊と比べると低い水準にとどまる。
▶︎旅行市場全体と旅ナカ体験市場のオンライン予約比率(2022~2026年)
※濃いグレーは旅行市場全体、青色は旅ナカ体験市場
旅ナカ体験のオンライン予約比率は2025年に33%、2026年に36%へ上昇する見込みだが、旅行市場全体の64%、65%を大きく下回る

レポートでは、その背景として、旅ナカ体験市場は地域密着型の小規模事業者が大半を占め、航空会社やホテルチェーンのようにオンライン販売を主導する大手事業者が存在しない点を挙げている。体験事業者の7割以上が小規模・零細企業で、一部には事業拡大や販売チャネルの拡充に積極的ではない事業者もあり、オンライン販売への対応が進みにくい構造にあるという。
こうした状況を反映し、旅行者側でもオフライン予約が依然として広く利用されている。米国、欧州ともにオンラインで旅ナカ体験を予約した旅行者は半数に満たず、特に55歳以上ではオンライン予約率が低かった。
旅ナカ体験は事前予約が主流 人気コンテンツでは早期予約ニーズが高まる
旅ナカ体験商品の予約タイミングを見ると、当日予約は12〜30%にとどまり、多くの旅行者が旅行前に予約している。
事前予約の理由として最も多かったのは、「あらかじめ予定を決めておきたい」「体験したい内容が決まっていた」など。また、「満席になることへの不安」を理由に挙げる旅行者が3割前後で、人気の旅ナカ体験では早期予約需要が高まっていることが分かった。
レポートでは、旅ナカ体験は宿泊や航空券ほど早期に予約されるわけではないものの、旅行計画の中で重要な要素になっていると指摘。今後も市場の拡大が期待される一方、市場のさらなる成長にはオンライン販売の普及や販売チャネルの拡充が鍵になると結論づけている。
【編集部コメント】
旅行者の「もう一つ」をどう地域の売上につなげる?
今回注目したいのは、市場規模の拡大だけでなく、旅行者が「複数の体験を楽しむ」一方で、1人当たりの支出は伸び悩んでいる点。単価を上げることだけが売上拡大の答えではなく、滞在中にもう一つ選んでもらう、周辺の事業者と組み合わせて楽しんでもらう、といった発想にも可能性がありそうだ。また、旅ナカ体験のオンライン予約率は33%と、旅行市場全体を大きく下回っている。これは小規模事業者にとって課題であると同時に、予約のしやすさを整えることで選ばれる余地が残っているとも読める。自社の体験は「見つけやすく、予約しやすい」状態になっているだろうか。まずは予約導線や情報発信を旅行者目線で確認することから始めてみるのも一案だ。
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