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ビジットジャパン世界22市場の海外旅行JNTOが調査、行きたい国ランキング アジア9市場と豪州・中東で日本が1位に

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日本政府観光局(JNTO)は、国際的な往来の再開が本格化し始めた時点におけるビジットジャパン重点22市場における国外旅行の意向等に関するアンケート調査を実施し、分析結果を公表した。

今後行きたい旅行先をはじめ、国外旅行の主目的、旅行先における行動の傾向、日本の地方エリアの認知度や訪問意向など、今後の地方誘客を見据えた設問を多く設けた今回の調査内容を前後編の2回に分けて解説する。

なお、ビジットジャパン重点22市場は以下の通り。2017年~2023年3月までに飛行機を利用したレジャー目的の国外旅行経験者が対象となっている。

東アジア市場…韓国、中国、台湾、香港
東南アジア市場…タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム
欧米豪・インド・中東市場…米国、カナダ、メキシコ、豪州、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、インド、中東地域(GCC6カ国[UAE、サウジアラビア、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート]と、トルコ、イスラエル)

なお、今回の調査対象となった22市場の市場規模は以下の通り。対象市場の人口は454833万人で、そのうち国外旅行実施者数(推計)は38300人。そのうち訪日旅行経験者数(推計)は11800万人となっている。

前編となる今回は、市場規模や訪日旅行経験率、日本の認知度、今後行きたい旅行先などを、「東アジア市場」「東南アジア市場」「欧米豪・インド・中東市場」の3つに大別して解説する。
(図・表出典:「VJ重点市場基礎調査結果概要」〈2024年1月〉)

 

訪日リピーター市場は香港、台湾、シンガポール

それでは各地域の訪日旅行経験率の推計値から紹介する。東アジアでは台湾、香港の域外旅⾏実施者の大半が、韓国では6割超が訪⽇旅⾏経験者となっている。特に、台湾、香港では国外旅⾏実施者の4割前後が過去に4回以上訪⽇旅⾏をしていると推計されていることも、訪日リピーター市場と呼ばれる所以である。

人口世界2位の中国は、国外旅行実施者数も訪日旅行者数も22市場の中で最大にも関わらず、国外旅⾏実施者の6割以上は訪⽇旅⾏経験がないと予測されている。

次に東南アジアだが、シンガポールでは国外旅⾏実施者の約8割が訪⽇旅⾏経験者、国外旅⾏実施者の約半数が訪日経験2回以上のリピーターと推計されている。一方、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムでは国外旅⾏実施者の約89割が訪⽇未経験と予測されている。

インド・豪州・米州・中東では、豪州、米国、カナダは国外旅⾏実施者の約34割が過去に1回以上訪⽇旅⾏を経験しているとのことだが、メキシコでは国外旅⾏実施者のうち約8割、インドおよび中東地域では9割以上が訪⽇旅⾏は未経験とのことだ。

最後に欧州地域だが、訪⽇旅⾏経験がない国外旅⾏実施者が大半で、フランスでは約8割、英国、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧地域では約9割が訪⽇旅⾏は未経験と推計されている。

 

日本の認知度、国・地域による差はどの程度?

次に国外旅⾏実施者の訪⽇ファネルの段階別の割合を把握しよう。旅⾏者は訪⽇旅⾏までに無認知、認知、興味関心、比較検討、予約購⼊という段階を踏むと想定され、もっとも数の多い無認知の段階から、予約購⼊の段階に向けて徐々に狭くなって漏⽃ (ファネル)のような形で表すことができるため、JNTOではこれを「訪⽇ファネル」と呼んでいる。

5つの段階をもう少し詳しく説明すると、「無認知」は日本について全く知らない、日本については知っているが観光地またはアクティビティに関する情報は見聞きしたことがない。「認知」は⽇本の観光地またはアクティビティについて知っているが、興味はない。「興味関心」は⽇本の観光地またはアクティビティについて興味はあるが、旅⾏プランは検討していない。「比較検討」は訪⽇旅⾏について航空券/ホテルを検索、もしくは、他国と比較しながら、旅⾏プランを比較検討している。「予約購入」は実際に⽇本への旅⾏商品やフライト・ホテルなどを予約している、となっている。

それでは各地域の訪日ファネルを見ていく。

東アジア・東南アジアでは、「無認知」の割合は台湾、香港、シンガポール、フィリピンでは1割未満、韓国、タイ、インドネシア、ベトナムは12割、 中国とマレーシアでは3割程度。訪日旅行プランの「比較検討」あるいは「予約購入」のフェーズにある人の割合は、台湾、香港、シンガポールで高く6割前後だった。なお、シンガポールは「予約購⼊」の割合が3割近くにのぼり、アジア地域の中で最も高い。

韓国、フィリピン、ベトナムでは「比較検討」以降の割合は約5割、中国とタイでは約4割、 マレーシアとインドネシアでは約3割と推計されている。

欧米豪・インド・中東では、市場差はあるもの、総じて「無認知」の割合が高く、英国、ドイツ、北欧地域、中東地域で半数以上、インド、 豪州、 米国、カナダ、フランス、イタリア、スペインで約3~4割、メキシコでは約2割となった。

なお、米国は「比較検討」以降の割合が4割近く、 「予約購⼊」の割合も2割で、欧米豪・インド・中東地域の中でも高い。

インド、豪州、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、中東地域では「比較検討」以降の割合は約2 3割、北欧地域では約1割だ。

 

今後行きたい旅行先、アジア9市場と豪州、中東で日本が1位に

続いて、今後⾏きたい旅⾏先として⽇本が国外旅⾏実施者に認知されているかどうかを把握し、競合旅⾏先を把握するための調査結果を見てみよう。調査では、今後⾏きたい旅⾏先(最大3カ国・地域まで選択)を調査し、各旅⾏先の選択率を集計した。

まず、東アジア・東南アジア地域では、韓国以外の市場で、今後⾏きたい旅⾏先としての選択率は「⽇本」が一番高かった。特に台湾、香港、タイでは約6割が行きたい旅行先の一番に日本を挙げており、東南アジア地域のその他の市場でも約35割となっている。韓国、中国では全体的に選択率が低く、「⽇本」の選択率も2割台となった。

次に欧米豪・インド・中東地域だが、インド以外の市場で、今後⾏きたい旅⾏先としての「⽇本」の選択率は上位5位以内に入った。特に豪州と中東地域では日本が1位となっている。

「⽇本」の選択率は、大半の市場で23割程度となっているが、インドでは1割程度にとどまっている。「⽇本」の選択率が45位となった英国、フランス、ドイツ、北欧地域でも、3位の旅⾏先の選択率との差は5ポイント前後となっており、その差は大きくない。

 

後編では、国外旅行先を選ぶ際に重要視すること、目的、日本の地方エリアへの訪問意向などについてお伝えする。

後編はこちら
>>>訪日客の地方エリア認知度と訪問意向は? アジアと欧米豪市場で乖離大きく。台湾は認知度9割超ーJNTO調査

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